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神戸地方裁判所 昭和46年(モ)839号 判決 1973年6月13日

債権者 国

訴訟代理人 上野至 外七名

債務者 松下昇

補助参加人 村尾建吉 外一名

主文

一  神戸簡易裁判所が同庁昭和四六年(ト)第八八号立入禁止等仮処分命令申請事件につき、昭和四六年四月八日になした仮処分決定を認可する。

二  訴訟費用は債務者の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  債権者

主文第一項同旨

二  債務者

1  主文第一項掲記の仮処分決定を取り消す。

2  本件仮処分申請を却下する。

3  訴訟費用は債権者の負担とする。

第二当事者の主張

一  申請の理由

1  債権者は、神戸市灘区鶴山町一丁目二番一号に国立神戸大学教養部(以下、たんに教養部という。)を設置して教養部の施設たる土地建物を所有し、同大学長をして右土地建物を管理占有させているものである。

2  債務者は、教養部ドイツ語講師として勤務していたものであるところ、債務者は、次の(一)ないし(三)記載のように教養部教員としての重要な職務を放棄し、神戸大学および教養部の管理機関の決定ないし執行機関の命令に違背し、教養部の教育機関としての機能の遂行を妨げ、国有財産を損傷した。即ち、

(一) 債務者は、旧大学秩序の維持に役立つ一切の労働(授業試験等)を放棄すると宣言して、昭和四三年度第二課程(夜間課程)一般教育課程後期の債務者担当授業科目の成績表を提出せず、同年度一般教育課程(昼間課程)後期の債務者担当授業料目の期末試験の実施を拒否した。また、債務者は、昭和四四年九月一日から開始された同年度一般教育課程前期の債務者担当の授業を拒否し、教養部長事務取扱(以下、たんに事務取扱いという。)の警告にも拘らず、同期の授業を行なわなかつた。

(二) 債務者は、事務取扱から昭和四四年一一月八日付公文書をもつて昭和四三年度一般教育課程後期の債務者担当科目の成績表提出および翌年度一般教育課程後期の授業担当を要求され、授業放棄が給与法による給与減額の対象となることを通告されたのに対し、昭和四三年度一般教育課程後期授業料目についてはレポート採点する意思を表明し、また、翌年度一般教育課程後期時間割への債務者の授業の組入れを申し出たものの、昭和四三年度一般教育課程後期授業科目の成績判定については、試験制度そのものに対する批判と称して受講者二四三名全員に〇点をつけた。また、翌年度一般教育課程後期の授業については、債務者の授業放棄に対する給与減額措置が撤回されるまで休講を続けると宣言して開講せず、事務取扱からの警告および休講不承認の通告にも拘らず、同期の授業を行なわなかつた。そのため、教養部教授会は、債務者担当授業の受講生を他の教員の授業にふりわけ受講せしめることを余儀なくさせた。

(三) 債務者は、昭和四四年二月五日以来、教養部教授会を欠席し、事務取扱から同年一〇月一日付公文書をもつて出席を勧告された後も、翌年四月一五日までの間に(同年一月一四日を除き)開催された同教授会に出席しなかつた。

(四) 債務者は、昭和四四年三月三日、同年度神戸大学入学試験第一日目の第一試験場(神戸市立御影工業高等学校)において、同大学教職員に対して入学試験事務拒否を煽動する文面のはり紙をなし、学長事務取扱の要請を受けた事務取扱の説得にも拘らず、右はり紙を撤去しなかつた。また翌三月四日、第八試験場(兵庫県立神戸高等学校)付近において配付された右はり紙と同旨の債務者名のビラも、同人が作成したものであつた。

(五) 学長事務取扱が、神戸大学評議会の議に基き、昭和四四年八月七日および同八日、同大学学舎等の不法占拠状態を解除するため、右学舎等の不法占拠者に対し退去命令を発し大学当局の許可なき者の各学舎構内への立入禁止を命令した際、債務者は、これらの命令に従わず、右両日にわタツて教養部学舎内に残留して退去しなかつた。

(六) 債務者は、昭和四四年八月八日に不法占拠状態が解除されたところのB一〇九教室を、再々の事務取扱からの使用禁止、明け渡しの通告をも無視して、同年九月一日から翌年二月二八日まで一部の学生とともに不法占拠して無断使用した。その結果、正規授業のための同教室の使用が妨げられた。

(七) 債務者は、昭和四四年度一般教育課程前期授業開始第一日目の同年九月一日、一部の学生とともに小林正光教授の化学の授業が行なわれるB一〇九教室に入り込んで同教室の教壇を占拠し、同教授の抗議や事務取扱らによる退去説得にも応ぜず、いつたん室外に連れ出された後も再び室内に立入つて教壇の占拠を続けて同教授の授業実施を中止するのやむなきに至らしめた。

(八) 債務者は、昭和四四年九月二四日、一部の学生とともに教養部N四〇一教室の入口付近に坐り込み、同教室において行なわれる湯木昭八郎講師を担当主任とする生物学実験の授業を中止するのやむなさに至らしめた。

(九) 債務者は、昭和四四年一〇月八日および同九日の両日、一部の学生とともに、教養部学舎の正門およびB棟入口に机、椅子等を持ち出してバリケードを築いて同学舎の一部を封鎖し、右九日の教養部の授業の多くを中止するのやむなきに至らした。

(一〇) 債務者は、昭和四三年度一般教育課程後期期末試験第一日目の昭和四四年一一月八日、一部の学生とともに吉村毅助教授担当の英語の試験場(教養部学舎LL教室)へ試験開始前に侵入してこれを占拠し、試験の実施を中止するのやむなきに至らしめた。また、同日、一般の学生による妨害のために混乱していた荻野目博道教授担当の英語の試験場(教養部学舎C四〇一教室)に立入り、受験生の前で受験拒否をしそうとする文書を板書した。

(一一) 債務者は、昭和四四年一二月三日、同人の処分を審議する教授会の公開を要求して、一部の学生とともに会議中の教養部教授会の会場に入り込み、同教授会を中止するのやむなさに至らしめた。また、昭和四五年四月八日、一部の学生とともに教養部教授会開催予定時刻の約一時間前から会場への通路に坐り込んで教授会開催を困難ならしめ、事務取扱の退去命令にも応じなかつた。

(一二) 債務者は、昭和四四年八月八日の神戸大学々舎の学生らによる不法占拠状態解除後、しばしば教養部学舎廊下の壁扉等にマジツク・インキで落書きをしたが、同年一一月八日、前記LL教室を占拠した際同教室内の壁にマジツク・インキで落書きをした。また、同年一二月下旬から昭和四五年一月上旬にかけては、教養部学舎の多数の教室の黒板の全面に白ペンキで落書きを大書し、授業に支障を与えた。更に、同年三月に教養部当局により汚損箇所が修復された後も、債務者は落書きを止めなかつた。

これらの行為は、国家公務員法第九八条第一項および第一〇一条第一項の規定に違反するものである。そこで、任命権者である神戸大学長事務取扱は、昭和四五年一〇月一六日同法第八二条第一ないし第三号の規定により債務者を懲戒処分として免職した。

3  右懲戒処分(以下単に本件処分という)手続は、次のとおり適法になされた。即ち、まず教養部教授会は、昭和四五年三月一八日本件処分に関する事実調査委員会をつくり、同年四月一五日その報告を受けて債務者を懲戒処分にすることが適当である旨を議決し、次いで、学長事務取扱から債務者についての処分案の提示を受けた評議会は、同年七月三一日債務者に審査説明書を交付するとともに、同年八月二一日および同月三一日の両日にわたつて債務者から口頭で陳述を受け(併せて書面陳述書の提出も受けた。)、更に同年九月一日参考人八名からも書面で陳述を受けたうえ、翌二日債務者を懲戒免職処分にすることを決定し、同年一〇月一五日処分説明書案を承認した(同月一四日には人事院から債務者に対する懲戒手続進行の承認を受けた。)。そして、任命権者たる神戸大学長事務取扱は、同月一六日債務者に対する本件処分の発令と同時に懲戒処分書および不服申立てについての説明も付した処分説明書を債務者に交付した。以上のとおりの手続を履践したものであつて、本件処分の手続には何らの瑕疵もない。

4  債務者は、教養部ドイツ語講師として別紙目録記載の研究室(以下単に本件研究室という)の使用を許されていたが、右免職処分によりその使用を許されなくなつたにもかかわらずその後も本件研究室の使用を継続するので債務者は、教養部長を通じ債務者に対し昭和四五年一〇月一六日、同月二六日、同年一一月六日、同月一七日、同年一二月五日および同月一七日と五回にわたつて本件研究室の明渡しを要求したにも拘らず債務者は、右要求に応じない。

5  保全の必要性について

ところで、教養部文科系教官の昭和四六年三月現在の現員数は七五名(但し、債務者を除く。)であるのに対し、教官研究室(個室)は七一室であつて二名同室の研究室が五室存在している。従つて、右の二名同室の研究室を一人使用にしなければならないのに、債務者に従前どおり一室を利用されることは、教養部文科系教官の研究活動に不便を強いることになるばかりか、同年四月からの新年度には現員一名の増加が決定されており、債務者が四月以降も本件研究室の使用を継続すれば、教官に対し現在以上の不便を強いなければならなくなり、教官の研究活動に著しい支障を生ずることになる。なお、既に、中川努教官が本件研究室に入室することになつているが、いまだ入室できないでいる。

また、債務者が本件研究室を使用するに伴い、同人に同調する一部学生が本件研究室に出入りして楽器を演奏したりして喧騒をきわめ、更に、本件研究室やその付近の研究室、施設に債務者あるいは右学生らによる落書が行なわれ、付近研究室入室教官の研究室使用を不可能にしているうえ、債務者や一部学生は、本件研究室を本拠として教養部建物の窓ガラスや扉の破損、建物への落書、教室の無断使用、授業妨害および入学試験の妨害等を行ない、大学の管理運営に重大な支障を与えているものであり、債務者らによる昭和四六年四月一二日の神戸大学入学式の妨害も予想される。

6  債権者は、債務者を被申請人として神戸簡易裁判所に対し仮処分の申請(昭和四六年(ト)第八八号立入禁止等仮処分命令申請事件)をし、同裁判所は、同年四月八日「債務者は、別紙目録記載の研究室に立入る等して、同室に対する債権者の使用を実力をもつて妨害してはならない」という仮処分定決がなされた。

そこで右仮処分決定の認可を求める。

二  申請の理由に対する答弁および主張

1  本件処分は、その内容に次のとおり重大かつ明白な瑕疵があるから無効である。

(一) 申請の理由2(二)記載の事実のうち債務者が〇点採点をしたことは教養部教授会で承認されているから正当な処分理由とはなり得ない。

(二) 同2(三)記載の教養部教授会欠席は正当な処分理由とはなり得ない。

(三) 同2(四)記載のはり紙およびビラ作成を処分理由にするならば一切の思想、表現を処分することになつて不当でありそれは正当な処分理由とはなり得ない。

(四) 同2(五)記載の事実のうち不退去の事実はなく、仮りにあつたとしても退去命令の根拠が明らかにされていないから退去命令に従わなかつたとしてもそれは正当な処分理由とはなり得ない。

(五) 同2(六)記載の不法占拠が処分理由とされているが、B一〇九号室を中心に展開されている自主講座運動こそが空間の意味を最大限に生かしたものであつて、B一〇九号室はいかなる参加者にも平等に開放されていたものであるからそれは正当な処分理由とはなり得ない。

(六) 同2(七)記載のような事実はない。

(七) 同2(八)記載の授業を中止させたことはなく、右授業は実質的に休講になつたに過ぎない。

(八) 同2(九)記載のような事実はない。

(九) 同2(一〇)記載の事実のうち荻野目博道教授担当の英語の試験場で受験拒否をしそうする文書を板書したことは相手の心的内部に影響を及ぼす表現行為をしたにすぎないからそれは正当な処分理由とはなり得ない。

(一〇) 同2(二)の記載によると、債務者が教授会の開催を中止させ、また、その開催を困難ならしめる退去命令にも応じなかつたことになつているが、債務者は右教授会に出席する資格を有するものであつて、それを妨害したというような事実はない。

(一一) 同2(一二)記載の落書を処分理由とすることは債務者の論文等の表現と同じ比重と方向性で表現されたものを落書として消去したうえ、それを処分理由とするもので、処分者の表現意識の低劣さを示すものというべく、それは正当な処分理由とはなり得ない。

2  また、本件処分は、処分過程における手続にも次のとおりの重大かつ明白な瑕疵があるから無効である。

(一) 教養部教授会が昭和四五年三月に設置した調査委員会なるものは本件処分に関する調査委員会ではなく、教養部における授業の時間割に関する調査委員会である。かりに、それが本件処分に関する調査委員会であるとしても、その権威および活動内容は教授会メンバーにすら秘匿したままで、しかも、右委員会では当事者たる債務者に対し陳述および反論の機会を与えていない。従つて、右委員会が同年四月一五日になした報告は本件処分のための報告とみることはできない。

(二) 教養部教授会は教授会出席者の三分の二以上の賛成をもつて債務者を懲戒処分に付する旨の議決をしておらず、ただ処分の程度について意見分布をとつたに過ぎない。また大学の自治および学部の自治のたてまえから、懲戒処分はその具体的内容をも当該学部か議決することが慣行となつている筈なのに、教養部教授会は本件処分の場合には懲戒処分の具体的内容についてまでは決定していない。

(三) 神戸大学の教授会では慣行上人事に関しては調査報告と同じ日に処分についての採決がなされることはないにも拘らず、本件処分の場合に右慣行が無視されている。

(四) 助手は教養部教授会にオブザーバーとして参加する権利を持ち、また、学長および教養部長選挙の投票権を持つているにも拘らず、教養部教授会が債務者の処分問題をとりあげた昭和四五年四月八日の教授会では助手の投票権は勿論、発言および傍聴も認められなかつた。

(五) 神戸大学評議会は、本件処分を決定するに際し、債務者に対し昭和四五年八月二一日および同月三一日の二回に陳述の機会を与えたのみであつて、それ以上の機会を与えなかつた。また、同評議会は、債務者が参考人一六名の直接口頭による意見陳述を申請したにも拘らず、僅か四名からしかも債務者の口頭陳述終了後に、文書による間接的方法で意見を聴取するにとどめた。

3  仮に、本件処分に重大かつ明白な瑕疵がないとしても、神戸大学には、教官の退職、転任後も本人が希望する必要期間は研究室を使用できる慣行が存在するものであるから、債務者も本件研究室を必要な期間使用することができる。

4  申請の理由5記載の主張は争う。教養部において研究室が不足しているのであれば、A四三〇号室およびB四〇七号室が使用されなければならないにも拘らず右両室とも使用されていないし、債務者も研究室不足のために本件研究室の共同使用の申出があるならばいつでもそれに応じる用意があり、また、本件研究室と授業、入試妨害とは関係がないから、本件仮処分の必要性はない。

第三証拠関係<省略>

理由

一  申請の理由1記載の事実は債務者において明らかに争わないから、自白したものとみなす。

二1  <証拠省略>によれば、債務者が申請の理由2記載の処分理由により本件処分を受けたことが一応認められる。

2  <証拠省略>を総合すると、本件処分理由とされた事実はその存在が一応認められる。

三  そこで、先づ、債務者が主張するように本件処分の内容に重大かつ明白な瑕疵があるか否かにつき判断する。

<証拠省略>によれば、債務者が昭和四三年度一般教育課程後期授業科目の成績判定で受講生全員に〇点採点したことは教養部教授会でも承認されていたことが一応認められるので、右の〇点採点が本件処分理由の一にされたことは不当であるが、その他の本件処分理由を総合して勘案するならば、本件処分は、いまだその内容に重大かつ明白な瑕疵があるとは認められない。

四  次に、債務者は本件処分の手続に重大かつ明白な瑕疵がある旨主張するので、以下判断する。

1  学校教育法第五九条、教育公務員特例法第五条第二ないし第五項、第九条、第一〇条、第二五条第一項第四号、国家公務員法第八五条、人事に関する権限の委任等に関する規程(昭和三二年七月二二日文部省訓令)第三条第一項、国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則(同二八年四月二二日文部省令第一一号)、神戸大学評議会規程第四条第二項、第六条、第七条、神戸大学教養部教授会規程第二条、第四条第二号、第五条、第六条、第七条の各規定と<証拠省略>によれば、本件処分に必要な手続は、まず法制上にあつては、神戸大学評議会がその審査にあたり債務者に対し審査説明書を交付して陳述の機関を与え、必要あらば参考人の出頭を求め、またはその意見を徴したうえ評議員の過半数の出席のもとに有効投票の過半数で懲戒処分に付することを決定するとともに、任命権者が人事院に懲戒手続進行の承認を得たうえ、任命権者が右決定に基き債務者に対し不服申立てができる旨およびその申立期間をも同時に記載した処分説明書を交付して懲戒処分を行なえばたりるのであるが、ただ、神戸大学における慣行として、評議会における審査以前の段階に債務者の所属する教養部教授会において教官人事に関する事項を審議することが要求されており、その議決には構成員の過半数の出席のもとに出席者の三分の二以上の賛成が必要とされていることが一応認められる。

2  そして<証拠省略>によれば、本件処分にあたつては債権者は申請の理由3記載のとおりの手続を履践したこと、教養部教授会が債務者を懲戒処分にすることを適当と認める旨の議決をするにあたつてはその構成員の過半数の出席のもとに出席者の三分の二以上の賛成を得たこと、および、評議会での本件処分の決定は評議員の過半数の出席のもとに有効投票の過半数をもつてなされたことが一応認められる。

3  そこで、申請の理由に対する答弁および主張の項2で債務者が重大かつ明白な手続上の瑕疵として主張する事由について考えてみる。

イ  (一)について

教養部教授会が昭和四五年三月一八日本件処分に関する事実調査委員会をつくつたことは前記2で認定したとおりであり、右委員会について債務者主張のような事実があつたとしても、それが前記1認定の本件処分に必要な手続の瑕疵となるとは認められない。

ロ  (二)について

教養部教授会が債務者を懲戒処分に付することが適当である旨を議決したことは前記2認定のとおりであり、債務者主張のような慣行の存在はこれを認めるにたる証拠がない。

ハ  (三)について

債務者主張のような慣行はこれを認めるに足る証拠がない。

ニ  (四)について

前記神戸大学教養部教授会規程第二条によると、教授会の構成員は教授、助教授および講師とされているが、同規程第七条によると部長は必要に応じ教授会にはかり構成員以外の者を教授会に出席させることができることになつている。しかし、債務者主張の教授会において助手に出席権が与えられたことはこれを認めるにたる証拠がない。

ホ  (五)について

債務者主張のような事実があつたとしても、前記1認定の本件処分に必要な手続に欠くるところはないこと勿論である。

4  してみると、本件処分の手続には重大かつ明白な瑕疵があるということはできない。

五  更に、債務者は、本件処分が有効だとしても、神戸大学には教官の退職、転任後も希望する必要期間は研究室を使用できる慣行が存在するから、債務者は本件研究室を使用できる旨主張するが、本件全疎明によるも右慣行が存在することは認められないから債務者の右主張は理由がない。

六  そこで、更に進んで仮処分の必要性につき判断するに、前記認定事実によれば、債務者は本件処分により本件研究室を占有機関として使用し得る地位を喪失したことが明らかであるから、本件仮処分の必要性があることはいうまでもない。

七  よつて、債権者の本件仮処分命令申請は理由があるから、さきに右申請を容れてなした前記仮処分決定を認可することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 山田鷹夫 田中観一郎 小川良昭)

目録

神戸市灘区鶴甲町一丁目二番一号所在

国立神戸大学教養部建物A棟四階四三〇号室

(面積一九・四四平方米)

仮処分命令申請

当事者の表示<省略>

申請の趣旨

一 債務者は別紙物件目録記載の研究室に立入る等して同室に対する債権者の使用を実力をもつて妨害してはならない。

二 債権者の委任した神戸地方裁判所執行官は、右命令の趣旨を公示するため、適当の処置をとらなければならない。

三 この命令に違反し、債務者が右研究室に立入る等の妨害をなした場合には、執行官は債務者を同室から排除する等これが除去のために適当な処分をなしうる。

との裁判を求める。

申請の理由<省略>

仮処分決定(昭和四六年四月八日 神戸簡易裁判所)

当事者の表示<省略>

右当事者間の昭和四六年(ト)第八八号仮処分命令申請事件について当裁判所は、保証として債権者に金一〇万円也を供託させたうえ、その申請を相当と認め、次のとおり決定する。

主文

債務者は別紙物件目録記載の研究室に立入る等して、同室に対する債権者の使用を実力をもつて妨害してはならない。

申請費用は債務者の負担とする。

物件目録<省略>

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